『火垂るの墓』や『おもひでぽろぽろ』で知られるアニメーション界の巨匠・高畑勲監督が、8年の歳月と50億円もの製作費を投じて完成させた遺作『かぐや姫の物語』(2013年)。日本最古の物語とされる「竹取物語」をベースに、「なぜ彼女は月に帰らなければならなかったのか」という根源的な問いから、姫の隠された感情と生への渇望を描き出します。
最大の特徴は、セル画アニメーションの常識を覆す「線画のスケッチがそのまま動いているかのような」圧倒的な描画スタイルです。特に、絶望したかぐや姫が衣を脱ぎ捨てながら山へ向かって疾走するシーンの、荒々しく暴力的なまでに躍動する筆致は、アニメーション表現の極北として世界中で絶賛されました。
美しい地球で生きることの喜びと悲しみを、水彩画のような淡い色彩とともに描き切った、紛れもない芸術作品です。