2013年にカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した是枝裕和監督の『そして父になる』は、ある日突然、子供の「取り違え」という過酷な事実に直面した二つの家族を通して、「父性」とは何か、そして「家族」を繋ぐものは何かを深く問いかける傑作です。エリートビジネスマンの野々宮と、小さな電気店を営む斎木。対照的な教育方針と家庭環境を持つ二つの家族が、葛藤の末に出す答えとは。

福山雅治が、仕事優先でどこか冷徹だった男が、葛藤の中で初めて「父親」になっていく過程を繊細に演じています。一方でリリー・フランキー演じる大らかな斎木家の佇まいが、物語に温かな救いと深みを与えています。カメラマン瀧本幹也による美しく静謐な映像と、バッハの旋律が、言葉にできない家族の痛みを優しく包み込みます。

血縁という絶対的なものと、共に生きてきた時間という積み重ね。そのどちらを優先すべきかという問いに正解はなく、是枝監督は静かにその過程を見つめ続けます。観る者の人生観を根底から揺さぶる、重厚なヒューマンドラマです。