藤沢周平の短編小説を山田洋次監督が映画化した『たそがれ清兵衛』(2002年)は、従来の「チャンバラ時代劇」の概念を根底から覆し、米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるなど国内外で絶賛された名作です。幕末の庄内藩で、夕暮れ時の退社時刻(黄昏時)になると付き合いもせずに足早に帰宅することから「たそがれ清兵衛」と揶揄される下級武士・井口清兵衛の、不器用ながらも誠実な生き様を描きます。
誰も殺したくないと願う心優しい男が、藩の命によってやむを得ず剣を抜かざるを得なくなるクライマックスの屋内での決闘シーンは、リアリティと緊迫感に満ちた息を呑むような殺陣として高く評価されました。
「真の強さとは何か」「人として本当に大切なものは何か」を静かに問いかける、日本人の美意識が詰まったヒューマンドラマの金字塔です。